山口県知事 二井関成様
2012年3月22日
日本キリスト教団西中国教区核問題特別委員会 委員長 橋本直行
原発いらん!山口ネットワーク 代表 武重登美子
「上関原発」建設計画に反対する2市4町議会議員連盟 会長 渕上正博
自然エネルギー推進ネット・光 代表 國弘秀人
小出裕章さんのお話を聴く会 代表 安藤公門
子供たちの未来を考える親の会 代表 原田芳郎
田布施町まちづくり研究会 代表 國本悦郎
未来につながる生命を育てる会 世話人 原 真紀
環境と自然エネルギーを考える市民の会 代表 大野弘恵
なちゅら♡周南 代表 池田真由美
憲法を活かす市民の会・やまぐち 共同代表 鳥家治彦・藤井郁子
NANA 代表 安部みちる
東日本大震災で発生したがれきの受け入れに関する要望及び質問書
日頃より県政において大切なお働きをくださり感謝いたします。
さて、野田佳彦首相は東日本大震災によって発生したがれき(以下、がれき)の処理が進まないとして、被災地以外の広域処理を強力に進めると発言しました。県内では、2012年3月13日に防府市の松浦正人市長が受け入れを表明しました。その際、松浦市長は「県がリーダーシップを取って、他の市町でも焼却を進めるべきだ」と話しました。
私たちとしては被災地の復興支援に力を注いでいきたいという思いは強いのですが、がれきの処理は下記に述べる様々な問題を含んでおり、これを認めることはできません。県民のいのちと暮らしを危険にさらすようなことはしないでください。特に、未来を担う子どもたちの健康を害することがあってはなりません。
1.放射能汚染について
がれきが放射能によって汚染されている可能性は非常に高く、今現在、明確な安全基準はありません。原発事故前には1㎏当たり100ベクレル以下という規制だったのが、今回8000ベクレルに引き上げられました。政府は各自治体に受け入れさせるためにそのような「基準値」を設けましたが、その数値も私たちの安全が保証されるものではありません。
「宮城県内の薪ストーブの灰から、1キロあたり最大で5万9千ベクレルの放射性セシウムが検出された」(2012年2月11日付朝日新聞)との報道がありましたが、がれきを燃やした場合、その残留放射性物質は何百倍にも濃縮がなされ埋め立て処分などは不可能になります。
もし安全だというなら、「何トン受け入れて、それによって放射線量はどのくらいになるのか」を、そして安全である明確な根拠を示してください。日本は民主主義の国ですから、実際に受け入れて処理する前に「がれきを引き受けたら放射線量がどうなり、付近の人はどのぐらい被曝するか」という数値を出すのが第一であると考えます。
また、がれきの基準値が設定されたのはセシウムだけですが、ストロンチウムやプルトニウムの基準はありません。搬出時にがれきの放射線量を正確に測定する方法もありません。
何より、放射性物質を含むがれきを汚染が少ない西日本まで運んで、広範囲に汚染を拡散することが許されてはなりません。子どもたちへの内部被曝も心配です。
2.その他の有害物質による汚染について
問題は放射能だけではありません。その他にも、PCB、ダイオキシン類、アスベスト、ヒ素、六価クロムなどの有害物質が含まれていることは言うまでもありません。このようながれきを処理することによって、環境が汚染されることは明らかです。
3.違法であるということ
行政の事務はすべて、根拠になる法律(根拠法)が必要です。これは「法治国家」の根本であり、「自分の思い」でなんとかなるようなものではありません。がれきの広域処理は、根拠となる法律が存在しない違法事業です。昨年8月に施行された「東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法」においても「広域処理」はその対象になっていません。廃棄物処理法も、この事業にはあてはまりません。「放射性廃棄物の処理」は同法から除外されているからです。
4.本当の支援とは?
『朝日新聞』2012年2月29日付に岩手県・岩泉町長の伊達勝身さんの発言が載っています。
「現場からは納得できないことが多々ある。がれき処理もそうだ。あと2年で片付けるという政府の公約が危ぶまれているというが、無理して早く片付けなくてはいけないんだろうか。山にしておいて10年、20年かけて片付けた方が地元に金が落ち、雇用も発生する。もともと使ってない土地がいっぱいあり、処理されなくても困らないのに、税金を青天井に使って全国に運び出す必要がどこにあるのか。」
山内知也神戸大大学院教授が主張される「がれき処理が遅れているのは、広域処理が進まないことが原因ではない。最大の原因は、被災地でのがれき処理の体制整備に時間がかかっていることでしょう。解決のためには、被災地で高性能なフィルターが付いた大型焼却施設の建設を増やすべきです。大きな金が落ち、雇用も期待できます。発電装置を備えた焼却施設をつくれば、処理を終えた後も、間伐材を使った木質バイオマス発電として活用できます。安全対策を徹底し、復興につながるかたちで処理を進めるべきです」(2012年3月16日付け朝日新聞)との考えに強く共感するものです。
植物生態学者の宮脇昭さんは次のように提唱されています。「瓦礫の山の中から有害なものや分解不能なものを除き穴を掘って土とともにがれきを埋め、マウンドを作り、その上に植樹すると約20年で自然豊かな森ができる。マウンドを高くすることによりそれらが緑の壁となって津波のエネルギーを減少できる緑の防潮堤となることで、かなりの高さの津波を防ぐことができる。」(『瓦礫を活かす「森の防波堤」が命を守る』参照)
受け入れるべきは移住を望む被災者であり、公金を大量に投入してがれきを遠隔地へ運ぶのは税金の無駄使いに他なりません。私たちは、今こそ「本当の支援」とは何かを考え、実行しなければなりません。人々の良心を悪用して、がれきの広域処理を急ごうとする動きに踊らされてはいけないと思います。
私たちは以上のように考えますが、二井知事におかれましてはどのようにお考えでしょうか。以下の質問にお答えください。
1県民の健康を守る立場にある知事は、原発事故後に国が一般廃棄物(焼却灰等)に対して80倍に引き上げた「処理基準」で県民のいのちと暮らしを守ることができるとお考えですか。また、今回のがれき受け入れ基準については、どのように考えておられますか。
2受け入れるがれきの放射線量は誰がどのように測定するのでしょうか。また、測定方法や測定されたデータはどのように県民に公表されますか。
3福島原発から放出された放射性物質は、セシウムだけではありません。ストロンチウム、プルトニウムほかの核種について測定する用意はありますか。あるとするならどのように行いますか。ないとするならそれはなぜですか。
4がれきには放射性物質が付着していると考えられます。焼却によって放射性物質は濃縮され、焼却炉自体が放射性物質によって汚染されることが心配されますが、その対策はどのようになされますか。
5がれきの焼却灰は、どのように測定しますか。100ベクレルを超えれば国際基準上は特別に管理すべき灰です。どのように管理されますか。
6焼却炉から放射性物質が飛散する可能性を考えたとき、乳幼児・妊婦・子どもたちへの健康への影響が気になります。焼却炉の排気については、どのように検査を行いますか。
7がれきを受け入れた場合、各自治体への輸送は安全に行うことができるとお考えですか。その場合、どのように行いますか。
8焼却灰は最終処分場に埋め立てるそうですが、群馬県伊勢崎市のように最終処分場の放流水から基準値を 超える放射性物質が検出された自治体があります。処分場の放流水については検査を実施する必要があると思いますが、どのような対策を考えていますか。
9瓦礫の海上輸送から埋め立てまでの各作業を行う労働者への被曝が懸念されます。安全対策についてはどのように考えていますか。
10アスベストや重金属、その他の化学物質の調査は行いますか。処理過程での放射性物質との複合汚染について、その安全性についての確認はどのように行いますか。
11処分を行う自治体の農作物、水産物、工業製品等に対する風評被害もしくは実被害、さらに観光業への風評被害が懸念されますが、対策及び補償についてはどのようにお考えですか。
12がれきの受け入れについて県民の合意はどのように得るのでしょうか。
13東京電力は、原発事故の民事上の責任を問われた民事訴訟の中で、原発から放出された放射性物質は、原発施設から離れた時点で東電の所有物から離れ、「無主物」になったとし、その「無主物」の影響によ る責任は取る必要がないという主張を行っています。がれきの処理に当たって、東電の責任、補償をどのようにお考えでしょうか。
以上の質問に対して3月29日(木)までに文書にて回答をお願いいたします。
〒743-0013 光市中央4-4-8
日本キリスト教団西中国教区核問題特別委員会
TEL 0833-71-0307
Eメール hashimoto-n@pop17.odn.ne.jp