Cape Town Session: Russell Tribunal on Palestine
パレスチナにかんするラッセル法廷:ケープタウン・セッション
2011年11月7日
●出典(Al HaqおよびPalestine Chronicle)
http://www.alhaq.org/
http://palestinechronicle.com/view_article_details.php?id=17240
●デズモンド・ツツ大司教の開会挨拶ビデオ:ラッセル法廷:ケープタウン・セッション
http://www.russelltribunalonpalestine.com/en/1399/south-africa-session-preparations
パレスチナにかんすルラッセル法廷(RT0P)は、世論を教育し政策決定者に対し圧力をかけるため、市民社会(NGO、慈善団体、労働組合、信仰に基づく諸組織)の要求に応えて創設された国際市民に基礎をおく良心の法廷である。占領地パレスチナにおけるイスラエルの(分離)壁建設にかんする国際司法裁判所(ICJ)の2004年7月9日の勧告の履行の失敗、2004年7月20日国連総会によって採用されたICJの見解を承認する決議ES-10/15の実行の失敗、および2008年12月から2009年1月のガザの出来事などにかんがみて、パレスチナ民衆の権利を援助する市民のイニシアティブを支え、また促進するために様々な国に委員会が創設された。
パレスチナにかんするルラッセル法廷(RT0P)は、卓越した学者であり哲学者のバートランド・ラッセルによって創設された「ベトナム国際民衆法廷」(1966~1967)、および「レリョ・バッソ民衆の自由と人権のための国際基金」に組織されたラテン・アメリカにかんする第二次ラッセル法廷(1974~1976)によって継承された同様の厳格な規則を採用し、また同じ精神に満ちている。この法廷に法的地位はない。人民裁判所として運営される。
イスラエル政府は、法廷に先立ちその申し立てを提示するよう招待されていたが、この権利を行使することを選択せずに当法廷の対応に無回答であった。
下記の陪審員の聴聞と審議によれば、2011年11月5日~6日のケープタウンにおけるパレスチナにかんするラッセル法廷の第三セッションの評決は、以下のように要約される。
Ⅰ、アパルトヘイト
法廷は、イスラエルは国際法のもとで明確されたアパルトヘイト(人種隔離政策)に等しい支配体制を制度化しパレスチナ人民を服従させている、と評決した。この差別的な体制は、それらの場所によって異なる区分のパレスチナ人に応じて変化する強度および形式ごとに現れている。占領地パレスチナでは、植民地軍政下で生きているパレスチナ人はとりわけ悪質なアパルトヘイト(人種差別)形態の支配に従属している。
イスラエルのパレスチナ人市民は選挙権をもっているものの、イスラエルの法律によって定義されたようなユダヤ民族の一員ではない。したがって、ユダヤ的国民の特典から締め出されており、全員一律に認められた人権の領域が系統的な差別のもとにおかれている。こうした違いに関係なく、イスラエルの支配は、パレスチナ人民が居住しているどこでも、結局、集団的には単一の統一されたアパルトヘイト体制に等しい、と法廷は結論を下した。
イスラエル国家は、国際法に含まれているアパルトヘイトの禁止を法的に遵守しなければならない。これは、人道に対する罪と見做されていることに加えアパルトヘイトの常習行為は普遍的に禁止されている。法廷では、アパルトヘイトの法的な定義に照らしあわせ、その司法制度のもとにおいてイスラエルはパレスチナの民衆を支配していると見做した。
アパルトヘイトは、それ自身独特の特徴を持つ南アフリカにおけるアパルトヘイトの経験にもとづき、国際法で禁止されている。しかしながら、アパルトヘイトの法的な定義は以下の三つの核心的要素が存在する世界中のいたるところで、またどんな状況によっても適用される。①二つの別個の人種グループが識別可能であること。②「非人間的な行為」が下位グループに対して犯されていること。そして、③このような行為が、他方を支配する一方のグループによる制度化された支配体制という文脈で組織的に犯されていること。
人種グループ
「人種グループ」の存在は、アパルトヘイトの問題の基本である。法廷で聴かれた専門家の証言に基づいて、陪審員は国際法が国民の起源や民族(エスニシティ)の要素を含む「人種」という用語に幅広い意味を与えると結論をくだす。したがって、「人種グループ」の定義は生物学的な問題というよりむしろ社会学の問題である。
イスラエル・ユダヤ人のアイデンティティとパレスチナ人のアイデンティティにかんする認知(自らの認知と第三者からの認知を含む)は、イスラエル・ユダヤ人とアラブ・パレスチナ人は、国際法の趣旨からすると別個の人種グループとして容易に定義されうると例証されている。受理した証言から、二つの別個の識別可能なグループが現実的には存在しており、「人種グループ」にかんする法的定義が、イスラエル政府当局がその司法権力でパレスチナ人を支配しているいっさいの状況に当てはまることが陪審員にとっては明白であった。
アパルトヘイトの非人間的な行為
このような体制状況で犯される個々の非人間的な行為は、国際法においてはアパルトヘイト(人種差別政策)の犯罪と定義されている。陪審員は、イスラエル政府当局によってパレスチナ民衆に対して犯されてきた「非人間的な行為」に相当する常習行為について多岐にわたる証言を聴いた。これらには次のものが含まれている。:
―「殺害を目的とする」正規の政策という形態をとった軍事作戦および襲撃を通じ広範囲におよぶパレスチナ人の生活の剥奪、ならびにデモンストレーションに対する致死力の行使。
―保護責任なしの行政拘留および恣意的な逮捕などの政策を通じた広範囲におよぶ自由の剥奪という状況下におけるパレスチナ人に対する拷問と残酷な扱い。このような政策は、治安上の事項として適当に正当化される範囲をしばしば越えており、グループとしてのパレスチナ人に対する支配形態と同然であると陪審員は評決を下している。
―パレスチナ人の開発を排除し、パレスチナ人グループを政治的、経済的、社会的かつ文化的な生活への参与を妨げる組織的な人権侵害。追放されたパレスチナ難民も、所有権および市民権の剥奪を定義する法律と同様、現在論議中の彼らの故郷に帰還する権利の否認という点に関しても、アパルトヘイト(人種差別政策)の犠牲者。とくに占領地パレスチナにおいては強制的な人口移動の政策は、依然広範囲に遂行されている。
―移動、居住、表現および結社の自由の諸権利を含むパレスチナ人の市民権および政治的な権利が厳しく抑圧されている。パレスチナ人の社会・経済的権利もまた、教育、健康、居住の領域におけるイスラエルの差別的な政策によって悪影響を及ぼされている。
1948年以来、イスラエル政府はパレスチナ人の土地の横領および植民地化といった計画的な政策を遂行してきた。イスラエルは、多くの法と常習行為を通じてイスラエル・ユダヤ人とパレスチナ人住民を分割し、また資源へのアクセス権および公共設備、経済基盤といったさまざまな質と水準を利用して両者に異なった現実空間を割り当ててきた。最終的に、二つのグループを大規模に隔離することによって、大規模な領地の断片化、そして保留地および飛び地の分離が行なわれた。法廷では、このような政策が「分離」という意味のヘブライ語hafradaとして、イスラエルでは公式な表現で使われているという趣旨の証言を聴いた。
系統的に制度化された体制
上記に上げられた非人間的な行為は、分離された実例あるいはランダムに見出されるものではない。それらは、系統的と呼べるほど補完的で統合されておりかつ十分広い範囲に及んでいる。またこれらは制度化されていると呼べるほど、公的制度および公共政策、法律という観点において十分な影響をもたらしている。
イスラエルの法体系においては、市民権およびユダヤ人国籍にかんする法を通じて非ユダヤ人よりも優先してユダヤ人に対して特権的地位が与えられ、後者は、居住権、土地所有権、都市計画、公共設備へのアクセス、および社会的、経済的、文化的権利を含む市民生活の大部分の領域において特権的グループをつくり上げた。(提出された法案および関連立法のリストを追加に加えたので参照。)法廷においては、イスラエル・ユダヤ人に排他的な数多くの実質的な特典を授与し慣習化している、ほぼ国家と同様の地位を維持するユダヤ民族諸機関(ユダヤ機関、世界シオニスト機構、およびユダヤ国民基金)とイスラエル国家との関係を詳しく述べた専門的な証言を聴いた。
西岸に関しては、法廷では、完全に二つに分離した法体系の存在に現われる差別および制度化された分離について強調している。パレスチナ人は国際的に公正な裁判基準からかなり逸脱した軍事法廷によって施行された軍令に従い、不法入植地に居住しているイスラエル・ユダヤ人は、イスラエル市民法および国民裁判制度に従っている。
結果として、同じ司法管轄の中で犯された同じ犯罪であっても異なったグループのメンバーによっては、はるかに異なった手順と判決が待っている。行政支配の機構は流布している認可システムのあちこちを引き回し、官僚的な規則はイスラエル支配の領域のいたるところでパレスチナ人に不利に作用している。明示的で直ちに利用可能な南アフリカのアパルトヘイト立法とは対照的に、イスラエルの制度化された統治体制を補強している軍令と規則という多くの法の曖昧さと手続きの困難さに対して、法廷の注意は向けられている。
Ⅱ、人道の罪としての迫害
法廷で聴聞されたアパルトヘイト(人種差別政策)の問題に関連する証言の多くは、迫害という人道に反する別個の犯罪としても重要な意味を持っており、累積責任という原理の下で、イスラエルの常習行為と関連づけられるだろう。迫害とは、一般市民に対する広範囲で系統的な攻撃という背景の下で、ある身元を確認できるグループの要員=アイデンティティ・グループのメンバーの基本的な権利に対する意図的で厳格な剥奪を意味する。法廷では、以下に記述する行為に関連して、提示された証拠が迫害の有無を裏付けるものだと結論づけた。
―、一般市民への集団懲罰の一形態であるガザ地区の包囲および封鎖:
―住民の家屋破壊は軍事的必要性で正当化されない:
―東エルサレムを含む西岸における分離壁と結合した管理体制がもたらす一般住民への敵意に満ちた悪影響:
―イスラエル南部ネゲブ地域の未承認のベドゥイン人村落の破壊および強制撤収にかんする一連の軍事行動:
Ⅲ、法的帰結
アパルトヘイト(人種差別政策)および迫害は、イスラエルに起因する行為であり、その国際的な法的責任を課す必要がある。イスラエルはその人種差別行動およびその迫害政策を終止し、適切な補償と繰り返さないという保証を提示しなければならない。
加えて、イスラエルは物質的であれ道徳的であれ、いかなる損害に対しても、国際的に不法な行動に起因した権利侵害に対する完全賠償を行なわなければならない。賠償に関して言えば、それが立証できる限り、生命、財産、利益の損失といった財政的に算定可能なあらゆる賠償金を以て、イスラエルは自身が引き起こした損害に対してパレスチナ人たちに賠償しなければならない。
諸国家および国際諸組織はまた、国際的な責務を有している。イスラエルの行動形態によって生じる不法な状況を認めることなくかつイスラエルにたいする助力や援助を与えず、イスラエルの人種差別行動および迫害政策を終局にもちこむために協力する義務を担う。これらの国家と組織は、人種差別および迫害の罪を含む国際的犯罪の訴追をとおしイスラエルの国際刑事法違反を終焉させなければならない。
Ⅳ、勧告
上記に見出されたことから考え、パレスチナにかんするラッセル法廷においては、関係者すべてにそれら法的義務どおりの行動を実施することを断固として勧告する。
それゆえ法廷は次のことを勧告する:
―イスラエル国家は、パレスチナ人に対する迫害行為をただちに終止すること、常習行為およびすべての差別法を撤廃すること、およびパレスチナ人民を支配するその人種差別(アパルトヘイト)体制をただちに廃止すること:
―迫害および人種差別政策(アパルトヘイト)というイスラエルによる行動形態を生じさせる不法な状況を終焉させるため、すべての諸国家が協力すること。助力ないしは援助を与えない義務に照らしあわせて、すべての国家は国際諸組織をとおして共同で、あるいは一致されない場合には個々で、イスラエルとの互恵的な関係を破棄し、外交関係における厳しい制裁を課すことを含め、イスラエルに十分な圧力をかけるための適切な対策を検討しなければならない。:
―迫害および人種差別政策(アパルトヘイト)の犯罪を含む、2002年7月1日以来パレスチナの領域において犯された国際的な犯罪のなかで「ゴールドストーン報告書」を通じて「できるだけ迅速に」調査に着手することを求められたように、また2009年1月にパレスチナ政府当局からの要請を受けたように、国際刑事裁判所(ICC)の検察官が司法権を引き受けること。:
―パレスチナは、国際刑事裁判所のローマ規定を受諾すること。:
この法廷が見出した限りでは国民議会の形成を含むが、グローバルな市民社会(そこに存在している人種支配の体制に反対するため、イスラエルおよび占領地パレスチナの領域内で勤勉に働く個々人およびすべてのグループを含む)が、南アフリカのアパルトヘイト終焉に貢献した連帯の精神を再現すること。:
―国連総会は、国連のアパルトヘイトに対する特別委員会を再編成すること。さらにパレスチナ人民に対するアパルトヘイト(人種差別政策)の問題を検討するための特別会議を招集すること。特別委員会は、関連する適切な対策を講ずるためにイスラエルのアパルトヘイト体制を支援している個人、組織、銀行、企業、組合、慈善団体、および他のあらゆる私的・公的な団体のリストを編集すべきである。:
―国連総会は、イスラエルによる長期的な占領と人種差別政策(アパルトヘイト)の本質を審査・吟味するために、南アフリカの「人間科学研究評議会」と同様、初期のパレスチナ占領地区人権「国連特別調査委員会」、現国際司法裁判所(ICJ)に対し勧告を要求すること。
―国連人種差別撤廃委員会は、来たるべき2012年2月に、イスラエルにかんする調査においてアパルトヘイト(人種差別政策)の問題点に焦点を当てること。
―南アフリカ政府は、パレスチナにかんするラッセル法廷の第三セッションのために、主催国として法廷の前で証言した参考人に対しイスラエル国家によるいかなる報復も行われないということを保証すること。:
法廷は、パレスチナをメンバーとして認めた国連教育科学文化機関(UNESCO)の決定を歓迎する。その機関に対し米国のとった懲罰的な行動を非難する。そして自決のためにパレスチナ人民の権利を積極的に援助することをすべての国家と国際的な諸組織に勧告する。法廷はパレスチナ人の人権を断固として援助してきたこれらの国々の連帯と援助を歓迎する。そして公正と正義のために苦闘し続けることを彼らに勧告する。
付録:関連するイスラエルの立法および提案された法律
(付録省略。イスラエル・アパルトヘイトの根拠となる立法および法案が列挙されていますので、専門的な関心のある方は上記サイトで原文から確認してください。)
(以上、松元保昭訳。不適切な翻訳があれば教えてくだされば幸いです。)